「今の会社にこのままいてよいのだろうか」と思いながらも、「転職して後悔したくない」と踏み切れずにいるかもしれません。結論から言うと、今すぐ「退職するか、現職に残るか」を決める必要はありません。まずは次の3つを同じテーブルに載せて比べてみましょう。
- 転職する
- 現職に残る
- 期限を決めて準備する
すべての質問に答えられなくても構いません。空欄は、決断前に集めるべき情報として扱えます。
転職するか迷ったときは、3つの選択肢を並べる

転職を考え始めると、「辞めるか、我慢して残るか」の二択になりがちです。しかし、情報を集めたり、現職で改善を試したりする「準備する」という選択肢もあります。
| 選択肢 | 向いている状況の例 | 最初の行動例 |
|---|---|---|
| 転職する | 変えたい条件が明確で、現職では改善が難しい | 希望条件に合う求人を調べる |
| 現職に残る | 問題を具体的な行動で改善できる余地がある | 業務調整や異動について確認する |
| 準備する | 判断材料、資金、スキル、家族との調整などが不足している | 不足しているものと確認期限を決める |
自分の状況で何を得て、何を手放す可能性があるかを比べましょう。
転職するか迷ったときに整理する7つの質問
質問1.今の仕事の何を変えたいですか?
最初に、「会社が嫌」「仕事がつらい」と感じる理由を、具体的な出来事から整理します。次の3点を書いてみてください。
- 実際に起きていること
- それによる自分への影響
- どう変わればよいか
たとえば「上司が嫌」という悩みでも、「指示変更が多く残業が増えること」が原因なら、変えたいのは仕事の進め方や労働時間かもしれません。これは状況を説明する架空例です。感情と事実を分けると、必要な条件を考えやすくなります。
質問2.その問題は、現職で変えられますか?
現職で試せることと、変えるのが難しいことを分けます。
- 業務量や優先順位を相談できるか
- 担当業務や部署を変更できるか
- 勤務時間や働く場所を調整できるか
- 相談しても改善しなかったか、個人では変えにくい問題か
「誰に、何を確認し、いつ判断するか」まで決めます。たとえば「業務分担を相談し、1か月後に負担を見直す」のように期限を置きます。
ただし、ハラスメントや心身の不調などがある場合、無理に社内交渉を試す必要はありません。安全の確保や社外の相談先を優先してください。
質問3.転職しても手放したくない条件は何ですか?
今の職場で得ているものも含め、手放したくない条件を3つ選びましょう。
- 生活:最低限必要な収入、勤務地、勤務時間、休み
- 仕事:仕事内容、裁量、得意なことを活かせる場面
- 環境:人との関わり方、評価方法、働く場所
- 将来:身につけたい経験、次の選択肢につながるか
さらに、選んだ条件を「満たさなければ応募しない条件」と「できれば満たしたい条件」に分けてみましょう。
質問4.変えたいのは「会社」「仕事」「働き方」のどれですか?
会社・仕事・働き方のどれを変えるかで、必要な準備は異なります。
| 確認すること | 考える問い |
|---|---|
| 会社 | 今の仕事内容のままでも、会社が変われば続けたいと思えるか |
| 仕事 | 会社に残れても、今の仕事内容を続けたいか |
| 働き方 | 時間・場所・雇用形態が変われば続けられるか |
答えが絞れなければ、「同職種・別会社」と「別職種」の求人を両方調べます。調べることと、応募や退職を決めることは別の行動です。
質問5.3つの選択肢で、得るものと失うものは何ですか?
「転職する・残る・準備する」それぞれについて、期待だけでなく負担や不確実性も書きます。
| 選択肢 | 得られそうなもの | 手放すもの・リスク | 確認が必要なこと |
|---|---|---|---|
| 転職する | |||
| 現職に残る | |||
| 準備する |
転職には環境を変えられる可能性がある一方、入社前には分からないこともあります。現職なら慣れた環境を維持できますが、問題が続く可能性もあります。同じ項目で比較しましょう。
質問6.判断に必要な情報はそろっていますか?
次の項目で分からないものがあれば、それを調べることが次の行動になります。
- 希望する仕事では、どのような業務やスキルが求められるか
- 実際の求人に、希望条件を満たす選択肢があるか
- 現在の給与、勤務時間などの条件と、転職後の生活への影響はどうか
- 自分の経験やスキルのうち、次の仕事でも活かせるものは何か
- 家族、健康、通勤など、仕事以外に調整が必要なことは何か
経験した仕事と希望する仕事のスキルを比較したい場合は、厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」のキャリア分析を利用できます。職歴や今後の希望を文章で整理したい場合は、マイジョブ・カードも選択肢になります。
ツールの結果だけで決めず、自分の希望条件や求人情報と照らし合わせて使いましょう。
質問7.いつまでに、何を確認して判断しますか?
迷い続けて疲れないために、最終結論ではなく「次に見直す日」を決めます。
たとえば、次のように設定できます。
- 転職する方向:今週中に希望条件をまとめ、求人を3件確認する
- 現職に残る方向:業務調整を相談し、1か月後に状況を見直す
- 準備する方向:不足するスキルと生活費を確認し、3か月後に再判断する
期間は例です。自分の状況に合わせ、「何が確認できたら判断するか」も決めます。
7つの回答から、次の行動を選ぶ

「はい」の数で転職の可否を決めず、回答全体を次のように整理します。
「転職する」を軸に情報収集する
- 変えたいことと希望条件が具体的になっている
- 現職では改善が難しい理由を説明できる
- 手放したくない条件と、受け入れられる変化を分けられている
- 実際の求人や必要なスキルを調べている
この段階でも、まずは求人確認や応募書類の準備から始められます。
「現職に残る」を選び、改善を試す
- 現職に残ることで維持したい条件が明確にある
- 問題を改善する具体的な方法がある
- 相談先、行動、見直す期限を決められる
現職に残る理由と見直す条件を言葉にしておきましょう。
「準備する」を選び、判断材料を増やす
- 希望する仕事や条件がまだ曖昧
- 求人、収入、スキルなどの情報が不足している
- 生活、健康、家族との調整が必要
準備には期限と完了条件を置きます。「求人を10件読み、希望条件と必要なスキルを整理したら見直す」のように決めます。
7つの質問をまとめる転職判断シート(目安10分)

7つの質問で考えたことから、判断に必要な点を抜き出します。今すぐ答えが出ない欄には「要確認」と書いて構いません。
3つの選択肢を比べ、現時点の方向を一つ選びます(質問5)。
- 転職する方向で情報収集する
- 現職に残り、改善を試す
- 期限を決めて準備する
その方向を選んだ理由:
今日または今週中にすること:
安全や心身の健康に関わる場合は、判断より相談を優先する
ハラスメント、賃金、解雇などの労働問題は、厚生労働省の総合労働相談コーナーで相談できます。この窓口では、幅広い労働問題について電話または面談で無料相談を受け付けています。
仕事に関する不安や悩みを一人で抱えている場合は、働く人と家族を対象とした「こころの耳」の相談窓口もあります。電話、SNS、メールの窓口があり、匿名・無料で利用できます。受付時間や利用条件は変更される可能性があるため、利用時に公式ページを確認してください。
この記事は、医療・法律上の判断を代替するものではありません。身の安全に不安がある場合や心身の症状がある場合は、7つの質問を埋めることよりも、信頼できる人、公的窓口、医療機関などへの相談を優先してください。
すぐにできること
- 質問1を読み、いま変えたいことを一文で書きます。
- 質問5の表で、3つの選択肢について得るものと手放すものを一つずつ比べます。
- 判断シートに仮の方向と、次に確認すること・見直す日を残します。
まとめ
転職するか迷ったときは、無理に今すぐ結論を出す必要はありません。
- 変えたいことを事実と影響に分ける
- 転職後も守りたい条件を決める
- 「転職する・残る・準備する」を同じ項目で比較する
- 不足している情報と、次に見直す日を決める
最初の一歩は、転職すると決めることではありません。まず判断シートに「今起きている事実」を一文で書くことから始めてみてください。

